私の初めての仕事は、某家電屋での販売のお仕事だった。
当時の私は、とにかくお客様に丁寧に対応することが良いことだと考えていた。
質問には丁寧に答え、値引きにも出来るだけ対応し、販売後の質問にもメーカーとの間に入って対応した。
ある日、上司に呼び出された。
珍しく真面目な顔をした上司は、私に言った。
「なあ。お客さんにとって、最大の裏切りはなんやと思う?」
私はとっさに答えられなかった。
誤った商品説明だろうか。他店よりも高い価格での販売だろうか。業務に追われ接客時間が短くなることだろうか。
正解を探す私に、上司は言った。
「この店がなくなることや」
言葉の意味が分からずキョトンとする私に、上司は言葉を続けた。
「お前は一生懸命やってくれてる。きっとお客さんも満足やろ。でもな。それがずっと続けられるか。お客さんは他の店員にも同じ対応を求め始めるし、値段だって次はもっと値引いてくれ言うやろ。それじゃ店がもたんのや。お客さんを裏切らんためにも、店が継続できる努力をせなあかん。お客さんを育てなあかんのや」
黙って聞いていたが、私は内心で納得していなかった。
目の前のお客様を満足させられずにお店が続いてなんの意味があるのか。
ひとりひとりのお客さんの積み重ねではないのか。
だが、もやもやしながら2ヶ月が経過したころ、上司の言うとおり私のやり方は間違っていると実感していた。
お客様と話しているだけが仕事ではない。
お客様を優先した結果、それらすべてがおろそかになり、結果としてお店の質を落としていた。
お客様は、ポスターがなければ店員に尋ねる。店員は質問に答えている間忙殺される。お店作りが出来ない。お客様への情報が足りないお店になる。店員に尋ねる。
悪循環だった。
ようやく上司の言葉の意味を理解した私は、お店の継続とお客様との関係向上を考えて業務にあたるようになる。
お店がなくならないように。
ひとつの神対応も大切だが、お店があり続けることが何よりも神対応なのだと。
ここまで読んで頂いた方にお伝えしたいのは、継続できない仕事のがんばり方をしないで欲しいということ。
目の前の仕事ももちろん大切だが、あなたが仕事が出来なくなることが最大の裏切りなのだ。
あなたが継続して質を良くしていける仕事の仕方をして欲しい。
後日談だが、私が数々の貴重な経験をしたお店は、いまはもうない。
おい!どうすんだ!このポイントカード!
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