2013年10月30日水曜日

黒船も2度目は本気だった。

Appleから、Mac用の新しいOSがリリースされた。
OS X Mavericks 10.9だ。
価格が無料だったことは、大きなニュースとなった。

OSの開発は、大変なコストがかかる。それがなぜ無料なのか。

普及率を上げたい理由は、すぐにいくつか思い当たる。

利用者の諸々の情報を得やすく生活に密着する地図アプリが、Mavericksでは搭載された。地図アプリは幅広く使われわれば使われるほど、提供側にもメリットがある。iOS6で賛否両論のあったApple謹製である。パチンコガンダム駅は、廃駅のか見当たらない。

iBooksも同様に、プラットフォームだ。対応ユーザーの多さは、そのまま市場の広さとなる。ただ、先んじてMacのAppStoreでリリースされたAmazon Kindleアプリはユーザー評価★☆☆☆☆の低空飛行中だが。

Macは使用しているがAppleIDは紐付けていないユーザーが、Mavericksが無料ならばとアップデートのために紐付ける。すると、iCloud等のAppleの循環モデルの一員が増えるわけだ。ちなみに、筆者がMacBookAirにMavericksをクリーンインストールする際、覚えていられないほどAppleIDの認証を何度も求められ、何度もエラーとなった。Recoveryモードからの再インストールの際に、認証の上でOSイメージまるまる再ダウンロードとは恐れ入った。

新しいOSは、当然新しい機能が多く、処理が複雑だ。先述の愛機MacBookAirは、2011MIDなのだが、若干荷が重かったようだ。これより古いMacも今回のアップデート対象だ。相当重いのではないか。よもやOSを無料にして、新しいMacを買わせるおつもりか。これは、古来より日本に伝わる戦術「えびでタイを釣る」ではないか。

OSのリリースから数日が経ち、どうやら別の理由も垣間見えてきた。

Apple、OS X Mavericksで多数の脆弱性を修正 Mountain Lionのアップデートは提供せず? (IT Media ニュース)

旧来のバージョンのサポートにかかる費用は、Appleにとって負債でしかない。
だが、最新OSを無料にすることで大多数のユーザーがアップデートを行い、またそういった回避策があることを理由に、旧来のバージョンのサポート費用を抑制しようとしているとしたら。
無料では、売り上げで開発費を回収できないが、サポート費で相殺できる。

ところで。
覚えていらっしゃるだろうか。
iOS3系からiOS4へのバージョンアップは、有料だった。
iOS4系からiOS5へのバージョンアップが無料だと知らされたときの衝撃は、相当な者だった。
スマートフォンのOSアップデートは、当然無料であるという空気を市場に作り上げたのは、Appleだ。そして、発売から2年が経過した端末もまた、その対象であるという、とんでもない空気を作り上げてしまった。

発売後は、対応したとしても不具合修正程度であった、他の端末売り切り型メーカーは、このチキンレースに乗せられた。
「Appleは無料でOSのバージョンアップを提供するのに、●●社は提供しないからだめだ」そういった声が聞かれた。
当然だ。端末メーカーは端末を販売して利益を上げている。販売後のサポートは、ただ利益を減らすだけだからだ。
AppStoreやItunesStoreを抱えているAppleは違う。iOSのバージョンアップの際には、Appleにも利益があるように機能が追加されてきた。だから無料にできた。

ユーザーから見れば、同じ「端末メーカー」でも、収益モデルの厚みが違う。

そのAppleが、今度はMac用のOSを無料にした。
Appleは、前回のメージャーバージョンアップのときから、MacOSXではなく、OSXと呼称している。
ただAppleの製品として意識させるために、OSのアプリ化を進めているのではないだろうか。
そして今回、違うルールで同じ土俵に上げさせられる企業は、どこになるか。

さて、長くなったが、最後にこれだけはお伝えしたいと思う。

実は、Maverickという名前が発表されたとき、筆者はミサイルの名前を思い出していた。

AGM-65マーベリックミサイル (Wikipedia)

空対地ミサイルと呼ばれる部類の、戦闘機が地上を攻撃するときに使われるミサイルだ。
この空対地ミサイルは、英語でAGMやASMと呼ばれる。
ASMとは「air-to-surface missile」の略だ。
折しも今回発表されたiPadはAirだそうだ。
Air to Surface MissileであるMaverickが、無料。
感心するばかりだ。

2013年10月29日火曜日

人の造りしもの。

「すいません、先輩。車で送って貰っちゃって」
「気にすんなよ。毎晩遅くまで大変だな」
「ありがとうございます。でもそれを知ってる先輩も、毎晩遅くまで残業じゃないですか」
「あー。まあ、ほら、あれだ。世の中には、物理残業と論理残業があってだな」
「ないです」
「仕方ねえだろ。やらなきゃいけないことだらけだ。やってもすぐに結果が出るわけじゃないし。やれるだけのことをやっても結果が出ないならそれが俺の実力だし」
「そりゃまあ、そうなんですが。あ、そういえば先輩。僕この前Twitterで見たんですけど」
「なんだよ」
「労働基準法を守ってたら経営なんかやってられないって発言した人が炎上してました」
「まさに火を見るより明らかってやつだな」
「ひどいこと言いますよね!」
「そうだな。その人の言ってることは、間違ってる。ただ、お前にはひとつ伝えておきたいこともある」
「なんですか」
「お前の家に向かってるこの道路の制限時速が何Km/hか知ってるか」
「40km/h制限です」
「で、いまこの車は?」
「メーター見るまでもなくもっと速いです。っていうか、40km/hで走ったら、後ろからクラクション慣らされますよ」
「そうか。道路交通法を守ってたら運転なんかやってられない、か」
「・・・・・」
「だがな。飲酒運転やひき逃げのように、僅かな違反も絶対に許されない部分もある。立場が違って歩行者から見れば、制限時速超過だって絶対に許せないかも知れない。分かるか」
「分かりません。分かりたくもありません。」
「若いな。ほら、着いたぞ。お疲れ」
「今日はありがとうございました。お気をつけてお帰りください。寄り道とか拾い食いとかしないでくださいね」
「お前なあ、それが社会人に言うことか」
「先輩の場合は、会社人ですからねえ」

2013年10月27日日曜日

眼鏡型デバイスの次を考える。

過去に黒歴史とされていた技術も、Googleが着手すると、なぜか話題になる。
さすがは世界一の広告代理店だなと感心する。
こんにちは、かけなびです。

話題ですね。GoogleGlass。
スマートフォンの
さらには、世界中のメーカーが同様のデバイスを実用化に向けて研究開発中だそうです。
早ければ来年ぐらいから商品が出てくるのではないでしょうか。

スマートフォンが一般に普及して5年が経ち、今の形状で出来る事は、やりつくした感があるのでしょう。
それならば、眼鏡型デバイスも普及して5年も経てば、次の形が考えられるに違いありません。

今日は眼鏡型デバイスの、次のデバイスの形を考えてみます。

・マスク型デバイス
  背面液晶モニタと、スピーカーを搭載。
  貴方の代わりに口を動かして喋ります。
  くしゃみやセキをした際には、何かが飛び散る場面まで再現。リアリティを追求します。
   ※ マイクには対応しません

・まゆげ型デバイス
  これまでの欠点だった、外見上の装着している不自然感を究極まで減らしました。
  周りの方は、貴方がまゆげ型デバイスを装着していることに気が付かないでしょう。
  なお、廉価モデルは、左右眉毛間の通信が有線となります。眉間に眉毛がつながりますのでご容赦ください。

・カツラ型デバイス
  超高精細曲面型有機ELがもたらす究極の頭髪再現性。
  人間の目の認識力を遙かに超えた解像度で、髪の毛一本一本をリアルに再現。
  空間センサーと気圧センサー、さらには1ペタFLOPSのGPGPUが、風の向きと強さに応じた自然な頭髪の流れを60FPSで描画します。
  ※ 防水ではありません

・コンタクトレンズ型コンタクトレンズ
  眼鏡の煩わしさからあなたを解放。
  視力矯正に最適。

・割り箸型デバイス
  木材の特性を分子レベルで物理シミュレーション。
  99.9999%の動作を保証!
  確実にきれいに2つに割れます!

・手鏡型デバイス
  テクマクマヤコンテクマクマヤコン スマートフォンになーれ♪

・扇子型デバイス
  そんなもん冬に持ち歩きたくねえって?
  ばか言っちゃいけねえ。
  こいつのCPUは特別製だ。ちゃーんと持ってたら暖かくなってきやがる。
  そりゃあもう、持っていられないぐらいに熱くなるってもんだ。

テケテンテンテン・・・・。

添付ファイルのパスワードは、後ほどメールします。

初めて見たときに、椅子から転げ落ちたメールのタイトルだ。
きっちり1分後に、添付されていたZIPファイルを展開するためのパスワードが送られてきた。

もし、メールが第三者に傍受されているとしたら、この暗号化には何の意味もない。
2通とも第三者が受信するからだ。

折に触れ、このメールを送ってきた担当者に、この運用の目的を伺った。
「会社の規則なので」が回答だった。
誠に申し訳ないが、回答になっていない。
セキュリティ担当の方に伺ってみた。
「メールの誤送信が問題になっており、2通に分散することで、誤送信を減らすのが目的」と説明を受けた。
「2通目のメールのアドレスは、1通目からコピー&ペーストしているみたいですけど」と質問したところ、100点満点の苦笑を頂いた。

衝撃はこれで終わらなかった。
「添付ファイルのパスワードは、御社の電話番号です」とのメールが届いたからだ。
弊社のホームページで公開中の電話番号を、ハイフンなしで入力したところ、見事に展開された。

はっきり申し上げる。
これらは、情報セキュリティへのではない。
では、いったい何なのか。

電子メールは、その性質上、第三者が容易に内容を知る事が出来る。

一般的に運用されている暗号化は、全数アタックで必ず復号化することが出来る。
ただ、復号化にかかる手間と時間が、復号する内容の費用対効果に見合わないが故に、その暗号は強いとされるだけだ。

例えば、私の家計簿が暗号化されているとする。
これを全数アタックするには一般的なパソコンで1時間かかるとしたら、酔狂な方は試すかも知れない。そして驚くが良いだろう、私の家計簿に。
では、仮に、世界最高のスパコンで1ヶ月が必要とした場合、試す方がいるだろうか。
スパコンを1ヶ月も使う費用をかけるぐらいなら、私はそのお金で、喜んで家計簿を公開する。
対象を変える。
暗号化されているものが某国の国防機密だとしたら?
スパコンで1ヶ月ぐらいなら、安い者ではないか。

話は、ZIPファイルのパスワードに戻る。
ZIPファイルのパスワードは、入力ミス何度しても状態が変わらない、全数アタックにおあつらえむきの仕様だ。応答も早い。
そこに「電話番号です」と情報を付与したら、電話番号のアルゴリズムを無視したとしても。10,000,000,000(百億)パターン以下だ。
人間にはとてつもない数だが、今のパソコンなら数時間で答えを出せる。やり方によってはいくらでも早くできる。
冒頭で登場頂いた、2通メール方式のZIPファイルのパスワードは、数字だけではなかったが桁数が少なかった。きっとこれをお読みのあなたの想像より少なかった。

繰り返しになるが、そんなものは情報セキュリティではない。
では、いったい何なのか。

仮に情報が漏洩したときの事を考えてみよう。

添付ファイルが非暗号のZIPファイルであった場合、情報漏洩への対策を取っていなかったとされる。
第三者は、なんの苦労もなく内容を知ることが出来る。
これは、情報漏洩の事故だ。

添付ファイルが暗号化されたZIPファイルであった場合、情報漏洩への対策を取っていたとされる。
第三者は、意思を以て暗号の復号を行い内容を知ることとなる。
仮に数秒で済んだとしても、だ。
これは、情報漏洩の事件だ。

つまり、私の仮説は、こうだ。
ZIPファイル暗号化による、なんちゃってセキュリティ対策をルールとしているのは、情報漏洩時の責任逃れではないのか。

それが数クリック、数秒で済む復号であるかどうかは、関係ない。
「組織としては対策を取っていたが、破られた」という大義名分のためではないのか。

報道のされ方や、世の中の騒ぎ方にも問題があるが、情報漏洩より、更に情報の改竄の方が組織の信頼へのダメージは大きい場合がある。

例えば、あなたが自宅の鍵をかけ忘れて外出し、帰宅したとする。
このとき、犯人が貴重品や金品を盗むのが情報漏洩と言える。
犯人が家の中に隠れて、貴方の帰りを待っているのが情報の改竄に近い。
かなり乱暴なたとえ話だが、どちらがより危険か、お分かり頂けるだろうか。
被害が広がる可能性を考えて頂きたい。

ZIPファイル暗号化には、署名機能はない。
第三者が改竄し、同じパスワードで復号することは、容易だ。

暗号化と復号化は対だ。
やりとりする相手に特別なハードウエアやソフトウエアを求めないZIPファイルの暗号化が広まったのは、その利便性が高かったことが大きい。
ただ、本当に重要な情報を含めるのならば、その方法は考えるべきだ。
組織のセキュリティ意識は、どこから見られているかわからない。
敵も味方もない。
言い訳が用意してあるから思考停止するのは、誰のためにもならない。

2013年10月22日火曜日

なるべく、これはやらないでおいて。

指示を出すということは、その指示と部下に対して、責任を持つということだ。
発注するということは、対価を払い、共に成果を目指すということだ。

中年の昔話で申し訳ないが、以前、こんなことがあった。

上司「これ、やっといて」
私 「期限は、いつまでですか?」
上司「急ぐんだ。なるはやで」
私 「なるはやって、なんですか?」
上司「お前、そんなことも知らないのか。なるべく早くだよ」
私 「優先度が高いということですね。理解しました。では、指示を受けてやっておりました業務を中断し、最優先で行います」
上司「いや、あれも急ぐんだ。両方なるはやで」
私 「・・・分かりました」

5分後。

私 「出来ました」
上司「なにが?」
私 「ご指示を頂いていた件、両方出来ました」
上司「早すぎるだろう!そんな時間で出来るわけない!ほらみろ、なんだこれは!」
私 「申し訳ありません。お言葉を返すようですが、5分で早すぎるということは、あなたの中には、想定される必要時間があったということです。なぜそれを指示として伝えず、なるべくというような曖昧な指示にされたのですか。私は、なるべく早くするために品質を犠牲にしました。否定される理由が分かりません」
上司「もういい!お前には頼まん!どうせ時間かけても、出来ないんだろう!」
私 「はい」

上司は正しい。
きっと私が数時間、数日かけようが、それほど品質は上がらなかったろう。なぜ私の不得意な分野をさせようとしたのか。なにか考えがあってのことか、何も考えていなかったのか、他の部署に飛ばされた上に退職したいまとなっては確かめる術はない。

さて、この経験から私が伝えたいことは3つだ。

ひとつめ。「なるはや」という指示を出す上司は、貴方の業務を管理出来ていない。管理職とは、何を管理する役職なのか、一度聞いてみると良い。
ちなみにこの質問に対し、米国では「業務」、日本では「人」と回答する管理職の方が多いそうだ。

ふたつめ。「なるはや」という指示を受けてはならない。ほぼ間違いなく、発言者の「なるべく」と、あなたの「なるべく」には、深い溝がある。落ちてケガをする前に「この業務がありますので、この作業量だと、最短で○○です。よろしいですか」と答えるべきだ。
とっさに答えられないなら、まずは自分の仕事のマネジメントから行おう。失敗しても自分で責任を取れる唯一の存在である、自分の上司になったつもりで考える目線を持とう。例えいまの会社を辞めても、自分のマネージャーが自分であることに変わりはないのだ。
なによりも、いずれ君が部下を持ったとき、誰かに発注するときに、責任が明確でない言葉を使わないクセをつけよう。不明瞭な責任は、不明瞭な組織、不明瞭な業務、不明瞭な製品しか生まない。

みっつめ。どうにもならなず押し切られたら、とぼけるしかない「え?なるはやって、なるべく早くだったんですか?てっきり・・・」
今回のタイトルにある台詞はそのときのためだ。ご自由にお使い頂きたい。ただし、その後の状況について、私は責任を持てない。つまりは、このみっつめこそが、なるはや、で。

2013年10月4日金曜日

タダのブラウザですから。

PC用ブラウザとして、シェアを伸ばし続ける、Chrome。
そのバージョン30が公開された。
ちなみにChromeは「スピード、シンプル、セキュリティの 3 つに重点を置いて開発されたブラウザ」だそうだ。

ところで、新機能として、画像を右クリックしてGoogleの画像検索が出来るようになったことはご存じだろうか。


これまでもGoogleでは画像検索を提供していたが、検索のためには、画像を手元の環境からブラウザにドラッグするなどの操作が必要だった。
Chromeは、この機能のショートカットを提供したことになる。

早速「類似画像を検索するのに便利」とか「パクリ画像検出装置」などと言われており、概ね歓迎されている機能のようだ。
Chromeが実装する新機能は、ユーザーに「あって当然の機能」として受け入れられる事が多く、いずれブラウザの中で類似画像を検索するのは当然の操作になるのかもしれない。
URLを入力するための欄で、検索が出来ることに違和感がなくなったように。

ところで、このショートカットは、ある事をユーザーに意識させない。
検索のために画像をGoogleに提供しているということだ。
単語で検索するとき、もちろん全て記録されている。
果たして画像を検索する場合は、どうだろうか。

Google画像検索の説明には以下の文言がある。


Google によるユーザーが送信した画像と URL の使用
[画像で検索] 機能を使用した場合、アップロードした画像や送信した URL はすべて Google が保管し、プライバシー ポリシーに従って処理されます。Google はこうした画像や URL を、サービスを提供、改善する目的にのみ使用します。


画像検索は応用範囲が広い。
例えば、誰かの顔写真を検索すれば、似ている芸能人が表示されるかもしれない。場合によっては、街角で撮影した人の名前が分かるかも知れない。

機能としての便利さ、結果のインパクトの大きさから、気軽に使いたい機能ではある。
その上で、個人的には、公になっては困る画像を基に検索することは、お勧め出来ない。
頭の片隅に置いて頂ければ幸いだ。

ブラウザは、とても高度な技術が必要なソフトウエアだ。
それが無料で提供にされるようになった時。
我々はその意味をもっと真剣に考えるべきだった。